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このタスクの効果的な学習方法をお伝えします。提示するキーワードは7つ前後に絞ってありますので、まずはそれらをできるだけ頭に入れます。キーワードの発音や意味がわからない場合は確認しましょう。その後で音声素材を聞き、頭の中に入れた表現と同じ表現が聞こえてきたらチェックするようにしましょう。キーワードを目で追いながら音声を聞くなど、目と耳を同時に使用する行動は、簡単そうに見えて実は非常に負荷が高いため、避けるようにしましょう。
少し補足すると、私たちが文章を読んだり、話を聞いたりするとき、読んだり聞いたりした情報は、多少の時間、頭のなかでいつでも検索できるように活性化された状態で保持されています。このような情報の処理と保持が行われる一時的な記憶はワーキングメモリ(Baddeley, 2000)と呼ばれています。このワーキングメモリには無尽蔵に情報が保持できるわけではなく、容量には限界があるとされます。もともと、Step 1で表示するキーワードを7つ前後(最大9つ)にした理由は、Miller (1956) の7±2を考慮してのことでした。“The Magical Number Seven Plus or Minus Two”という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。これは、George Millerという心理学者が書いた論文のタイトルで、人間はお互いに関係のないものを一度におよそ7つ以上短期記憶に保持することは難しい、ということを説いています。これに基づいて、Step 1のキーワードを7つ(最大で9つ)に絞り、すべてのキーワードをいったん頭に入れたうえで音声素材を聞く活動ができるように配慮しました。
ところが、Millerの提示した7±2という数字は、厳密な実験データにより導き出された値ではありませんでした。その後、Millerの研究にヒントを得たCowan (2001) が膨大な研究データを収集し、短期記憶の容量限界は3~5個のチャンクであることを示しています。
これらのことを考慮すると、人によっては、コースウェアで提示される7つのキーワードをすべて頭に入れてから音声を聞くことは難しいかもしれません。その場合は、キーワードを半分ずつに分けましょう。キーワードは音声の中で出てくる順番に表示されているので、まずは前半の4つのキーワードだけをしっかりと頭に入れてから音声の前半部分を聞き、いったん音声停止した後に聞き取れたキーワードをチェックしていく。続いて、今度は後半の3つのキーワードを頭に入れてから音声の後半部分を聞き、聞き取れたキーワードをチェックします。このように皆さん自身で工夫することで、脳に適度な負荷をかけながら学習を進めるようにしましょう。
*参考文献
・ Baddeley, A. (2000). The episodic buffer: a new component of working memory?, Trends in Cognitive Sciences, 4(11), 417–423.
・ Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24(1), 87–114.
・ Miller, G. A. (1956). The magical number seven, plus or minus two: Some limits on our capacity for processing information. Psychological Review, 63(2), 81–97.
・ 竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
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