FAQ

三ラウンド・システムの教材は他の教材とは異なる独自の構造をもっているため、背景にある理論を知らないまま学習を始めてしまうと、さまざまな疑問が湧いてくると思います。そうした疑問を溜めこんで自己流の学習方法で進めてしまっては高い効果は期待できません。ここには、皆さんから尋ねられることが多い疑問にお答えします。この教材での学習法をよく理解して、学習を進めていきましょう。

  • QStep 1のタスクは「内容を大胆に推測してみよう」というものですが、推測するだけでいいのでしょうか。もう少し細部まで把握しないと不安です。
    A Step 1で内容を推測するだけでは物足りず、細部の把握もしなければいけないのではないかと焦る気持ちはよくわかりますが、ちょっと待ってください。三ラウンド・システムでは、人間が本来持っている大きな学習力を最大限に引き出して、それを効果的、効率的な学習につなげる、という考え方の上に成り立っています。そのためには、まず皆さんのやる気を引き出さなくてはいけないわけですが、同時に、引き出されたやる気を減退させない、あるいは絶望させないことも必要になります。

    三ラウンド・システムの場合、学習力を引き出すために、内容や言語構造の面で比較的高度な音声素材を使用しますし、コミュニケーションの目的を達成するプロセスというのは決して簡単なものではありません。そこで、その複雑な作業を、Stepごとに分割して、易しくした上でタスクに取り組んでもらっています。つまり、Step 1では内容を大まかに推測する、Step 2では細部について把握する、といった作業の分割です。そして、それらのラウンドで学んだ結果が、Step 3でのより高度な学習に活かされることになります。このように、ゴールを見据えた上で、スモールステップで学習を楽しく進めていけるように設計されているため、Step 1では、聞き取れた語句や映像、写真などから、音声素材の内容を大胆に推測するだけで十分なのです。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • QStep 1で聞き取れたキーワードをチェックするタスクがありますが、音声が速すぎてチェックが追いつきません。
    A このタスクの効果的な学習方法をお伝えします。提示するキーワードは7つ前後に絞ってありますので、まずはそれらをできるだけ頭に入れます。キーワードの発音や意味がわからない場合は確認しましょう。その後で音声素材を聞き、頭の中に入れた表現と同じ表現が聞こえてきたらチェックするようにしましょう。キーワードを目で追いながら音声を聞くなど、目と耳を同時に使用する行動は、簡単そうに見えて実は非常に負荷が高いため、避けるようにしましょう。

    少し補足すると、私たちが文章を読んだり、話を聞いたりするとき、読んだり聞いたりした情報は、多少の時間、頭のなかでいつでも検索できるように活性化された状態で保持されています。このような情報の処理と保持が行われる一時的な記憶はワーキングメモリ(Baddeley, 2000)と呼ばれています。このワーキングメモリには無尽蔵に情報が保持できるわけではなく、容量には限界があるとされます。もともと、Step 1で表示するキーワードを7つ前後(最大9つ)にした理由は、Miller (1956) の7±2を考慮してのことでした。“The Magical Number Seven Plus or Minus Two”という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。これは、George Millerという心理学者が書いた論文のタイトルで、人間はお互いに関係のないものを一度におよそ7つ以上短期記憶に保持することは難しい、ということを説いています。これに基づいて、Step 1のキーワードを7つ(最大で9つ)に絞り、すべてのキーワードをいったん頭に入れたうえで音声素材を聞く活動ができるように配慮しました。

    ところが、Millerの提示した7±2という数字は、厳密な実験データにより導き出された値ではありませんでした。その後、Millerの研究にヒントを得たCowan (2001) が膨大な研究データを収集し、短期記憶の容量限界は3~5個のチャンクであることを示しています。
    これらのことを考慮すると、人によっては、コースウェアで提示される7つのキーワードをすべて頭に入れてから音声を聞くことは難しいかもしれません。その場合は、キーワードを半分ずつに分けましょう。キーワードは音声の中で出てくる順番に表示されているので、まずは前半の4つのキーワードだけをしっかりと頭に入れてから音声の前半部分を聞き、いったん音声停止した後に聞き取れたキーワードをチェックしていく。続いて、今度は後半の3つのキーワードを頭に入れてから音声の後半部分を聞き、聞き取れたキーワードをチェックします。このように皆さん自身で工夫することで、脳に適度な負荷をかけながら学習を進めるようにしましょう。

    *参考文献
    ・ Baddeley, A. (2000). The episodic buffer: a new component of working memory?, Trends in Cognitive Sciences, 4(11), 417–423.
    ・ Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24(1), 87–114.
    ・ Miller, G. A. (1956). The magical number seven, plus or minus two: Some limits on our capacity for processing information. Psychological Review, 63(2), 81–97.
    ・ 竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • QStep 2の空所補充をするタスクで、音声を聞きながら選択肢を選びたいです。なぜ、音声を聞けないようになっているのでしょうか。
    A Step 2で出てくる空所補充のタスクは、空所に入るべき単語を聞き取れるかをテストしているのではありません。これはテストではなく、これも学習のためのタスクなのです。ですから、20~30%しか正解できなかったとしてもがっかりしないでください。そのぐらいがちょうど良いレベルの教材と言えます。なぜなら、この時点ではその教材での学習がStep 1とStep 2の一部しか済んでいないからです。これからStep 2の学習を進めていくことで、空所を埋められるような英語力をつければよいのです。

    Step 2での学習とは、空所を埋める努力をした後に、20~30%しか埋められなかった空所を含むチャンク(4語前後からなる意味のある語群)をこのタスクのヒントとして学ぶ、つまり音声言語の聞き取りのために、単語よりも大きな言語単位で聞く訓練をすることによって、いかに発音変化や倒置、省略などを含む自然な発話が聞き取り易くなるかを学ぶことなのです。その証拠に、チャンクをまじめに学んだ後には音を聞かなくても驚くほど容易に空所が埋められるようになります。それがいわゆるトップダウンと呼ばれる音声情報の処理手法なのです。

    最後に、望ましいタスク実践の手順をお伝えします。ストレッチ体操で呼吸や体の重心を意識するかどうかで効果が全く違ってくるのと同じで、英語学習もやり方次第で見違えるほどの効果を得られるようになります。指示にしたがって、しっかりと集中して取り組みましょう。
    ①空所のある英文を見ずに、しっかりと音声を聞く。
    ②頭に残っている音声と内容を念頭に、空所の前後を読んで空所を埋めてみる。
    ③HINTに提示されているチャンクを繰り返し発音して頭に入れる。
    ④再度、空所補充にチャレンジする。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • QStep 3のタスクが国語の問題のようで苦手です。
    A この質問に回答する前に、いただいた質問文について考えてみましょう。「国語の問題のようで苦手」とのことですが、これは何を問いたいのか曖昧な表現と言えます。「国語」、「問題」、また「苦手」という各表現の辞書的な意味は誰にでもわかるでしょう。ただ、「国語の問題のようで」と言われたときにはわからなくなります。長い発話の内容を記憶しておくのが苦手なのか、その要約をするのが苦手なのか、はっきりと言われていることだけでなく行間を読むのが苦手なのか、話し手の意図を汲むのが苦手なのか、それ以外にも何か理由があるのか、といった多くの解釈があり得るからです。

    このようなとき、より長い談話の中で読んだり聞いたりすれば、この発言の本当の意味が前後関係から理解できることがあります。まさに、このような時にどうすれば良いのかを学ぶのがStep 3での学習目的です。したがって、効果的なコミュニケーションのためには、聞く人の立場をよく考えて発言する必要があることを考えれば、このような発言をする人には特にStep 3での学習が必要になるのです。高度なレベルでの、情報の編集処理による発話の理解は、英語であろうと日本語であろうと求められることであり、苦手であっても避けては通れない学習課題なのです。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • QStep 2とStep 3のタスクにはヒントが3つずつ付いていますが、つい全部のヒントをまとめて読んでしまいます。なぜ、まとめて読んではいけないのでしょうか。また、ヒントはどのように活用するのが効果的なのでしょうか。
    A 複数のヒントを一度に読んで、聞く回数を節約することはやめましょう。ひとつのヒントを読んで、その内容を意識しながら音声を聞き、さらに次のヒントを読んでは再び音声を聞く、というようにすることが重要です。言葉の学習には、ある程度の繰り返し学習が必要です。それに、言葉を使う技術というのは、一般に考えられているよりもずっと複雑なのです。したがって、その複雑な技術を一回や二回聞いただけで習得できると考えるのは誤りです。たとえば、30秒ぐらいの発話の中にも学ぶべきことは数限りなくあると言ってよいでしょう。単なる内容理解のテストのように見えるタスクであっても、実はそれに解答するためにしなくてはいけないことがいくつもあり、ヒントを活用することによってそれらを学べるようになっているのです。つまり三ラウンド・システムでは、ヒントによって、注目すべき箇所を変えながら、同じ発話を何回も聞くことによって、少しずつ、いくつもの必要なことが学んでいけるように配慮されているのです。そうすることによって、一つの発話から学べるものが多くなる、逆に言えば、学習に抜けが少なくなるとも言えるでしょう。

    「3つのヒントは一度に読まないようにしましょう」といった指示は、教材の中にも書いてあります。それに従って、頭を使いながら積極的にタスクを解いていきましょう。さらに各タスクの解説や随所に織り込まれているコラムを興味を持って読むことで最大の効果が得られるように作られています。もちろん、皆さんのこれまでの学習経歴や現在の英語力は異なるため、指示から多少逸脱することはあるかもしれませんが、原則として、どの作業も飛ばしたり、加えたりするべきではありません。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • QWordsやPhrasesの表現は、その場でしっかり覚えるべきでしょうか。また、WordsやPhrasesに載っている単語や語句以外で意味の分からないものを辞書で調べてもいいですか。
    A 人間は忘れる動物ですが、学んだことを忘れてしまう前にもう一度学ぶことを繰り返すと記憶が強く定着する傾向もあります。ですからWordsやPhrasesも、出てきたときに完全に覚えようとするのでなく、繰り返し学習することを心がけましょう。1回目の学習であれば80%程度覚えられれば十分です。Part 1で学習したのに忘れてしまった表現がPart 3を学習しているときに出てくるかも知れません。そのときはPart 1をもう一度見なおして復習してください。そして重要なことは、ひとつのUnitの学習を終了した時点で、もう一度全体をとおして復習をすることです。このように何回か繰り返して学習すると記憶に強く定着します。

    WordsやPhrasesに載っていない語でわからない英語表現があったら、ぜひ自分の辞書で調べてみましょう。ただし、調べる前に、まずは前後関係や写真、それまでに聞き取れた内容などから、その表現の意味を推測し、自分の推測が正しかったかどうかを確認するために辞書を引くようにしてください。そうすると、調べた結果が断然頭に残りやすくなります。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • QStep 3の最後に表示されるConfirmation(書きおこした英文)を最初から見られるようにしてほしいです。
    A 書きおこした英文を見るのは、Step 3の学習が終わってからにしましょう。それより前に見てしまうと、なんとなく聞けた気分になってしまい、必要な学習ができなくなるからです。有名なことわざに、「畳の上の水練」というものがあります。泳げるようになるためには実際に水に入って溺れそうになりながらも必死に練習をすることで初めて体得できる、ということです。自転車の練習も同じです。他人が乗っているところを見るだけでは乗れるようにはならず、自分で乗って、ふらついたり、転んだりしてようやく乗れるようになるのです。

    学習者が努力せず、楽をして身につけられることが科学的であるかのように言われることがありますが、それにも限度があります。必要最低限の苦労は覚悟してください。重要なのは、目の前にある教材を「聞けたつもり」になることではなく、その学習の苦労を通して応用力をつけ、教室外で話される英語が聞けるようになることなのです。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • QStep 3の最後にある発展語彙の学習は何のためにあるのでしょうか。
    A 発展語彙はコミュニケーション能力の養成には不可欠な語彙を増強するためにあります。語彙は、対話や読み物といった文脈のなかで学ぶのがもっとも望ましいのですが、すべての語をそのようにして学ぶには時間が足りません。そこで、三ラウンド・システムでは、学習した教材の内容や機能などに関連のある語彙や慣用句を学ぶことで、現場学習の形に近づけ、効果的に学んでもらおうという意図があるのです。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • Q教材で勉強した英語は、Step 3までくれば大体理解できますが、初めて聞く英語は相変わらず分からないし、TOEICや映画の英語はほとんど理解できなくて不安です。
    A 初めて聞いたときにはわからないけれど、Step 3までくれば大体理解できる、とのこと、あなたに理想的な教材で勉強していることにまずは自信を持ってください。なぜなら、初めは聞けないからその教材で勉強するのです。しかも、教材のステップに従って勉強すれば、聞けなかった教材が聞けるようになった、ということは、教材が教材としての役割を果たしているということを意味します。

    そして、生の英語になるとほとんど理解できなくて不安だ、というのは当然です。英語圏の子供はある程度の言語力を持つ6歳になるまでに17,520時間、つまり1日8時間ずつ、6年間も、毎日英語を聞いているという事実があります。あなたは、この教材で学習を始めてからどのくらいの時間をかけていますか。どのように勉強しても応用問題の聞き取りが自信を持ってできる真の英語力をつけるには最低500時間程度は生の英語を聞き、さらに語彙力を増強する必要があるのです。それまでは、教材を信じて、毎日1時間程度の学習を継続することが大切です。これを達成したとき、あなたもきっとTOEICや映画の英語を楽しみながら聞けるようになっているでしょう。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • Q教材をもっと活用したいと思っています。Step 3が終わった後、教材を使ってどのように学習すればよいか、教えてください。
    A Step 3が終わった後に教材を使ってできることとして、少なくとも二つ提案できます。

    ひとつ目は、もう一度最初に戻って勉強をやり直すことです。2度目の学習では一度目ほど時間を使う必要はありませんが、答えがわかっているからといってどんどん先へ進んでしまうのではなく、やはりヒントや解説、確認のトランスクリプション等をよく読み、指示にしたがって、あたかも初めての学習であるかのように頭を使った学習をすることが大切です。きっと1回目には気づかなかった多くの事を発見するでしょう。また、2回目に多くのことが出てくるくらいに、最初の学習では完璧を期さない(80%の理解を目指す)ことも必要なのです。1回の学習で完璧を期そうとすると、極端に進度が遅くなり、疲れてしまって学習効率も下がります。

    ふたつ目は、いつも文字とにらめっこでの学習は退屈でしょうから、教材の音声だけを聞き、まずはその全体的な内容が理解できるかどうかを確認してみましょう。続いて、もう一度音声を聞き、その後について自分でも言ってみることです。最初は口に出して言う必要はありません。そうするとスピードについて行けない恐れもあるからです。いわゆるサイレント・シャドーイングという活動ですが、スポーツのイメージトレーニングと同様、これを行うことによってスピーキング力の向上につながります。ただし、英語らしいイントネーションやリズムで話せるようになるためには、実際に口に出して顎や舌の筋肉を動かしながら練習することも不可欠です。サイレント・シャドーイングの後は、音声を少しずつ区切りながら声に出して何度もリピートして、英語らしく話すことに慣れていきましょう。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • Qタスクに答えるだけでは、完全に理解できたように思えません。一文ずつ訳してはいけませんか。
    A タスクに答えるだけでは、完全に理解できたように思えない、というのは、その通りかも知れません。教材とは、あくまで、これから行う言語活動のサンプルに過ぎないですし、教材の中のタスクもその教材を使って言語活動をするときのサンプルにすぎないからです。でも私たちは、日本人全員の顔を見なくても、何人かの日本人の顔を見ているうちに、大体その典型的な顔の概念を持つことができます。それと同じで、サンプルを使って主体的にある程度英語による言語活動の訓練をすると、英語による言語活動の応用力がつきます。それが英語力というものなのです。心配しないでタスクを実践してください。

    一文ずつ訳すということは、効率的なコミュニケーション能力の養成を考えた場合、やってはいけないことです。どうしても日本語と英語が単語のような小さな単位ですべて対応するように思いがちですが、そうはならないことが多いですし、関係代名詞などで後ろから前へ返って意味を理解するといった無駄な情報処理もしなくてはならなくなります。しかもそのようなことをした挙句にそうしてできた訳(日本語)の意味がわからない、というケースが山ほどあります。日本語に変換したらその英語が理解できたと思い込むのは幻想に過ぎないのです。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • Q何度聞いても聞こえない音があります。トランスクリプションが間違えているのでしょうか。それとも私の耳がおかしいのでしょうか。
    A 自然に話された英語の平均速度は、1分間に約200語です。これは、1秒間に10~15音が発音されていることを示します。そうだとすると、すべての言語音を人間の発音器官で正確に発音することはできません。したがって、自然な発話では必ず音の連結、弱化、吸収などの音変化が起こります。ですから、耳がよければよいほど、何度聞いても聞こえない音があることに気がつくでしょう。

    私たちは母語である日本語の場合はすべての音が聞こえているように思っていますが、実はこのことは英語だけでなく日本語にも言えることなのです。私たちは日本語の聞き取りに膨大な時間をかけてその技術に習熟していますから、日本語でも起こっている発音変化に対して対応できる能力を知らない間に習得しているのです。英語ではそのための高度な技術を意識して学ばなければならないということになります。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • Q英語が速すぎて聞き取れません。スピードを遅くして聞いても良いですか。
    A 英語が速すぎて聞き取れないとのことですが、実は外国人に聞いても「日本語が速すぎて聞き取れない」と言います。つまり、英語も日本語も速すぎて物理的に聞き取れないのではなく、母語以外の言語の聞き取り方に問題があって速く感じられるに過ぎないのだということが見えてきます。

    そうだとすれば、ゆっくり、はっきり発音されている教材を聞いて、それが聞けるようになったところで、現実世界では通用しないこともわかりますね。畳の上の水練では何もならないのです。溺れそうになって水の中を泳ぐ技術を学ぶことこそが必要なのです。

    それでは、畳の上の水練でない聞き取り訓練とはどのようなものなのでしょうか。それは、言語音の一つ一つが正確に発音されるはずだ、と期待して待つのではなく、自然な発話の場合、先行する単語の語尾の子音と、後続する単語の語頭の母音がまとまって発音される「連結」や、連続する単語が結合する際に音が省略される「脱落」、連続する前後の音韻の影響を受けて別の音韻に変化する「同化」などの音変化があるのだということを受け入れて、それに対応できる方略を学ぶことが大切なのです。三ラウンド・システムの中でチャンク単位での学習や習得を推奨しているのはそのような方略の一つだからです。また、画像や対話の流れなどから何と言っているかを推測する訓練をしているのもそのためです。発話速度を遅くしたものをいくらたくさん聞いても、そうした方略を学ぶことはできませんし、結果として実態に即した英語を聞き取れるようにはなりません。

    *参考文献
    竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    #学習方法について
  • Q 三ラウンド・システムの教材はTOEIC対策の教材ですか?
    A ちがいます。三ラウンド・システムの教材はテスト対策用の教材ではないか、と勘違いされることがあります。これについては、竹蓋・水光(2005)のなかでわかりやすく説明されているので引用します。

    なるほど本書でも、CALLの授業の効果を測る一つの尺度として、TOEICの試験の得点の伸びが使われている。ただ、本書の実践報告を注意深く読むことで気が付くであろうが、TOEICの成績の向上は、あくまで、付随的な結果である。本書で実践例が紹介されているCALL教材も、またそれを活用した授業もTOEIC対策の授業を最初から意図しているものではないということは、是非とも見逃してほしくないことである。この「結果としての実用英語」と、それ自体が「目的化された実用英語」は、似て非なるものの典型と言ってよいだろう。マルチメディアを有機的に活用したCALLの場合、英語を体験的に学ぶことがそのまま異文化体験に端緒を開き、発信力の養成につながっていくのである。その結果、その能力の一つの表れとしてTOEICの成績が向上したに過ぎない。(鈴木,2005,p.227)

    以前はTOEICやTOEFLの英語は、どちらかと言えばforeigner talkの範疇に入る英語であり、言い淀みや言い間違えもなく、アメリカ英語以外の方言もありませんでした。ところが、近年、これらのテストで使われる音声はオーセンティックな英語に近づけられる傾向にあり、アメリカだけでなく、イギリス、カナダ、オーストラリアの方言で発話されたり、話者が言い間違いをしたりする場面も出てくるようになりました。

    このため、オーセンティックな英語を素材として採用し、そのような英語を聞き取れるようになることを目指して制作されている三ラウンド・システムの教材で学習すれば、教室外でも使える実用の英語力が身につくと同時に、結果としてそれらのテストでも力を発揮できるようになる可能性が、以前よりも高まった、と言えるかもしれませんね。

    *参考文献
    ・ 鈴木英夫(2005).「5.2 異文化理解能力と実用的な発信力の養成」竹蓋幸生・水光雅則(編)『これからの大学英語教育―CALLを活かした指導システムの構築』(pp.222–230)岩波書店
    ・ 竹蓋順子(編著)(2022)『続・英語教育の科学』学術研究出版
    ・ 竹蓋幸生・水光雅則(編)(2005).『これからの大学英語教育―CALLを活かした指導システムの構築』岩波書店
    #学習方法について
  • Q学習をしているにも関わらず「現在の学習合計時間」が増えません。
    A 教材終了時に画面左下の「QUIT」ボタンを押して終了していないと学習履歴が正確に記録されません。必ず、「QUIT」ボタンを押して終了するようにしてください。
    #ソフトウェアトラブルについて
  • Q学習中にパソコンがフリーズしてしまいました。
    A パソコンを再起動し、再度学習を開始してください。
    パソコン自体は動いているけれど、教材画面はフリーズしている場合は、一度ブラウザを閉じ、再度学習を開始してください(この場合、学習履歴が一部消えてしまうことがあることをご了承ください)。
    #ソフトウェアトラブルについて
  • Q千葉大学でCALL教材を使った授業はありますか?
    A あります。
    普遍教育英語科目(必修)としては、「Interaction & Presentation」を履修する代わりに「CALL」を履修することができ、「Critical Thinking in English」の代わりに「CALL2」を履修することができます。
    また、選択科目として「CALL3」もあります。
    #その他
  • Q1年生の時に「CALL」を履修した場合、2年生で「CALL2」「CALL3」を履修することはできますか?
    A 可能です。
    2年次英語科目の「CALL2」「CALL3」では、1年次「CALL」とは違う教材を使用します。
    ちなみに、「CALL2」と「CALL3」では共通の教材群を使いますが、複数の教材が準備されているので、たとえば「CALL2」でAの教材を学習後、「CALL3」でBの教材を学習する、といった形で履修できます。
    #その他
  • Q「CALL2」の履修を希望しているのですが、教材の違いを知りたいです。
    A「CALL2」のシラバスに教材の説明があるので参照してください。
    #その他